フェルマーの最終定理 - Simon Singh

フェルマーの最終定理
サイモン シン Simon Singh 青木 薫
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これは専門的な本ではなく、数学史の本です。数学とはどういう学問なのか、数学者とはどういう人種なのか、そして、証明に300年を要したフェルマーの最終定理に向かって、数学がどう進化して来たのかと言うのが主題です。

原著者のSimon Singhと言う人物、非常に話を構成するのが上手です。それぞれのパートに、飽きさせないような小話をたくさん用意してあり、それを読む度に数学の魅力に引き込まれていってしまいます。そして、青木さんの渾身の役が素晴らしい。原著の良さを崩すことなく、よく吟味された素晴らしい日本語に仕上げています。

この本、数学は世の役に立たぬキチガイの道楽であることを肯定しつつ、それが持つ究極の美しさを他の( 世の役に立つ(笑) )自然科学と対比させて的確に説明してくれています。学校で教える国語が芸術の狭い解釈の押しつけであるが如く、学校で教える数学も公式の押しつけでしかありません。数の持つ絶対美は、もっと深層の部分から我々を魅了して止まないのです。